【第176回】第6次産業革命来たる!

“産業革命”は18世紀から19世紀にかけて英国で始まった産業殖産興業運動である。
“第6次産業”は農業経済学者の今村奈良臣氏が提唱した日本の農業事業に関する造語である。農業の1次産業+食品加工業の2次産業+小売り、販売、レストランの第3次産業が合体した農業産業のサプライチェーンを第6次産業(1次+2次+3次=6次)と命名したのである。

英国の産業革命は1760年代から1830年代にかけて蒸気機関などの工業化動力の発明、軽工業の技術革新(飛び杼の発明から始まってジェニー紡績機、水力紡績機、ミュール紡績機、力織機、綿繰り機)、コークス製鉄法による鉄の量産技術、七年戦争後のパリ条約による植民地(すなわち原材料の供給地)の獲得などを背景とする、植民地からのサプライチェーンによって一貫した紡績業の工業化が達成された。

これによって産業革命は、それまでの主要な生産方法を大きく変え(工業化)、人々の生活や社会構造を根本から変化させた出来事となり、英国はインドをはじめとする大英帝国からの原料調達からマンチェスターとリバプールにおける大量生産によって世界で一番工業化に成功した国になったのである。

日本の“第6次産業”は、2015年の農協の解体による非利権化による農業の事業化、法人化、中間物流の排除によって垂直統合のビジネスモデルが構築できるようになったことが時代の背景として存在する。遅ればせながら日本にもコルホーズ(kolkhoz)、ソフホーズ(sovkhoz)の解体や人民公社の解体が、本家の共産主義国よりも40~50年遅れてやってきたのである。

そこにITインフラの革命が新しい動力として活用されるようになっている。その動力は、クラウド、IoT (Internet of Things)、M2M、いわゆる農業ICTというITインフラ革命である。

今度の第6次産業革命は、農業ICTというインフラと第6次産業統合ベースという基盤をインターネット上に構築して実現される。
以下に説明してみたい。

これまで日本の農業を60年以上の長きにわたって衰退させてきた超利権団体についに解体のメスが入った。全国に約700ある地域農協を束ねてきたJA全中(全国農業協同組合中央会)が農協法で認められている監査権などをすべてなくし解体する方針を固めたのである。これに伴いJAトップの萬歳会長が責任をとって4月9日に突然辞任発表をすることになった。
農協が解体されることによって、農業法人による生産・加工・流通・商品化の一貫ビジネスが実現可能になったのである。法人経営であるから農業のスタイルも変化する。

まずは、ICTによる農業生産の見える化と工業化である。温度センサー、湿度センサー、日照センサー、CCDカメラなどを搭載した棒を畑に挿し、そのデータを自動的にインターネットにアップロードするのである。これにより農業生産の工程管理や原価管理を遠隔の本社で行うことが可能となる。
作物の育成状況や収穫時期もリアルタイムに実績収集を行って監視することができる。この時に使われるテクノロジーがIoTやM2Mと呼ばれるテクノロジーであり、そのサーバーはクラウド化され、自動的にスケールアウトやスケールアップができるような仕組みになっているのである。

ここまでは従来の農業の工業化IT化であるが、第6次産業革命には次のステップが存在する。食品の加工である。例えば、トマトソースをトマトから作成する場合に、洗浄やカット、煮込みや調味のような細かい工程があり、その時間と工程を正確に管理しなければならない。しかも厳密な原価管理が必要である。それを行うのが、統合化配合表というレシピのデータベースである。
これが農業ビジネスの2次産業を支えることになる。

次のステップは、第3次産業、農業におけるサービス産業である。これは商品化、物流、販売など、製品ができあがってエンドユーザーに届くまでの全プロセスをサポートする(いわゆる農業ビジネスにおけるB to Cである)。
直営レストランでの調理、小売りに対する配送、インターネットによる通信販売、道の駅やスーパーなどにおける直販など、B to Cに関するすべてのプロセスをサポートすることになる。しかも、その1次、2次、3次のプロセスの中で発生する写真、ドキュメント、包装紙のデザイン、バーコード、荷札、現品票、請求書、発注書、受注書などのすべてのドキュメントも統合的に管理されなければならない。

読者のみなさんはこのあたりで気づかれているかもしれないが、第6次産業革命のデータベースは一体どうなるのだろうと思われるかもしれない。

そこで登場するのが、「統合化部品表」である。

下の図を見ていただきたい。統合化部品表はすべてのデータやドキュメントを階層構造で持ち、それをそれぞれの立場(この場合は1次産業View、2次産業View、3次産業View、6次産業Viewなど)でフィルタリングして見ることができるインフラである。

この第6次統合化部品表をクラウド上に構築することによって第6次農業革命は実現されるのである。

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このデータベースをクラウド上に実現することによって、農業は完全にITインフラを用いた工業ビジネスへと変革されるのである。生育の工程管理から商品の二次加工、調理、保存、配送、までのすべての農業サプライチェーンを一つのデータベースで行うことができるのである。
クラウドなので農家が数件からスタートして1万件が参加するまで連続的にスケールアップできるし、食品加工業者とレストランチェーンと物流業者とのサプライチェーンもシームレスに構築することができるのである。

第6産業+産業革命=第6次産業革命の誕生である。

いままさにこの革命が進行しようとしている。