【第71回】税金オンチ日本人

1990年に英国の名政治家、マーガレット・サッチャーが選挙で敗退した理由をご存知だろうか?
彼女は1979年に英国首相に就任以来、英国病と言われた英国経済を立て直し、産業を官から民へ移行し、1982年のフォークランド紛争ではアルゼンチンに完全勝利した保守党のリーダーであった。その政治手腕は抜群で、“鉄の女”のあだ名がついていた女性政治家である。 彼女はコミュニティ・チャージ、俗に言う、人頭税(ポール・タックス)を強行導入したことにより、政治生命を絶たれたのである。英国のコミュニティ・ チャージは1990年に導入され、1993年に廃止された。税金というのは外国の社会にとってそれほど重大な問題なのである。人頭税はローマ時代からある税金で、以下のような制度である。

 


・人頭税
人頭税(じんとうぜい)は納税能力に関係なく、全ての国民1人につき一定額を課す税金である。にんとうぜいとも。

【概要】
古代ローマにはカピタティオ・ユガティオス制があり、中世ヨーロッパ、ロシアにも存在。
所得が無くてもそこに住んでいるだけで課税される。そのため、困窮した庶民が逃亡したりすることもあった。
中国では人頭税に相当する口算や力役があり、均田制においては丁を単位に租庸調が課された。
780年の両税法により資産額への課税に移行。
イスラーム諸王朝では、ジズヤ(jizya)が知られている。ジズヤは非ムスリム(イスラム教徒)に対して課せられるもので、ジズヤを支払うことでイス ラーム以外の宗教を信仰することが保証されるという性格を持つ。非ムスリムがイスラームへ改宗した場合には免除された(ウマイヤ朝時代には改宗した場合で も徴収された)。
封建制の時代には、多くの国で導入されていたが、所得に対して逆進性の強い税制であるため、現在ではほとんどの国で導入されていない。近年では、イギリスでサッチャー政権時代の1990年に導入された例があるが、国民の強い反対に遭い、1993年に廃止された。
日本では、琉球王国により宮古島・八重山諸島で15歳から50歳までの男女を対象に1637年から1903年まで制度化され、貧民・病人に重い負担となっ た。また、竹中平蔵は、「能力がありかつ努力を重ねて高所得を得ている人々を讃(ほめたた)える税制が必要だ」として、所得税を廃止し、人頭税の導入を主 張した。
高所得者優位の逆進性を逆に利点とする主張である。
(文藝春秋社『日本の論点’99』、佐藤雅彦との共著・日本経済新聞社『経済ってそういうことだったのか会議』など)
消費税と同様に所得の無い人にも課税する税であるが、消費税の場合、消費をしない(金を持っていない)人が課税されることはない。人頭税は無一文でも課税 される。2005年現在ではこうした制度を採っている国はない。(国民年金や介護保険が事実上人頭税になっているという批判はある) なお、国によっては、外国人メイドの雇用や出入国の際に特別な人頭税を課す場合があり、これらも人頭税と呼ばれる。
(以上、Wikipediaより引用)



日本人は税金オンチである。
なぜこんなことになるのかと言うと、2つの理由があると思う。
1つには高校までの教育で社会のしくみをまともに教えて来なかったからだ。
例えば、高校で税金のしくみや不動産売買のしくみや株のしくみや特別会計や相続税のしくみ等々、日本の国民として生活するのに必要な国のしくみをほとんど 教育していない。唯一学ぶとしたら、公民という教科を選択しなければならず(公民の教科書に全て国のしくみが説明されている訳ではもちろんありません が)、その公民で受験で使用される教科書は、現代社会と政治経済であるが、その内容がどのようになっているかざっと紹介してみよう。

 


■現代社会 I 編 現代に生きる私たちの課題
1.人類の生存とエネルギー問題-レポートの書き方
2.私たちの生活と環境問題-フィールドワーク
3.家族生活の変化-資料の読み方・活用
4.福祉社会と私たち-フィールドワーク
5.戦争と現在-フィールドワーク
6.迷信・俗信をさぐる-社会調査
7.生命は操作できるか?-ディベート
II編 現代の社会と人間としてのあり方・生き方
第1章 現代の社会生活と青年
1節 現代社会の特質と社会生活の変化
国際化の流れ/進みゆく情報化/大衆化の時代/少子化・高齢化の社会
2節 自己形成の課題と青年の生き方
青年の不安と苦悩/自分さがしと自分つくり/愛と性と生を考える/若者文化と流行/なぜ学ぶのか/働くことの意味/男女共生社会をめざして
第2章 経済社会と経済活動
1節 現代経済のしくみ
生産と消費/現代の企業/市場のしくみ/金融市場と金融政策/
税と財政政策/国民所得とは何か/経済成長と景気変動/
為替相場と国際金融
2節 現代経済の変遷と課題
日本経済の成長と変化/産業構造の変化/日本農業と食料/雇用と労働問題/消費者の保護と企業の責任/資源・エネルギー問題/公害の防止と環境保全/社会保障/世界のなかの日本経済
第3章民主主義と政治のしくみ
1節 民主政治の理念と日本国憲法
政治と国家/人間の尊厳と民主主義/日本国憲法の基本原理/自由権を求めて/社会権の誕生と保障/平等と幸福の追求/主権者としての国民/憲法第9条と平和主義
2節 統治のしくみと現代政治
国会と立法/内閣と行政/司法と裁判のしくみ/地方自治と直接民主制/選挙制度と政党/世論とマスメディア/市民運動とボランティア/現代日本の政治
第4章 国際社会と日本の役割
1節 国際関係と国際法
国民国家と人種・民族問題/国家主権の対立と相互依存/国際法と国際連合/人権と民主主義の世界化
2節 国際関係の変容と地球時代の課題
冷戦とその崩壊/資本主義経済と社会主義経済の変容/経済のグローバル化/南北問題と開発援助/世界平和と軍縮/地球環境と人類の課題/地球時代の日本の役割
(以上、三省堂「現代社会」の教科書目次より)

■政治・経済 I 編 現代の政治
第1章 民主政治の基本原則
1.人間と政治
2.近代国民国家における民主主義
3.世界の政治体制
4.民主政治と「法の支配
第2章 立憲主義と日本国憲法
1.日本における立憲主義の成立
2.日本国憲法の基本原理
<採用情報>「女性の政治参加の進展」
第3章 日本の民主政治と立憲主義
1.国民代表としての国会
2.民主政治のなかの内閣
3.「法の支配」と裁判所
4.民主政治と平和主義
5.平和主義と立憲主義
第4章 日本国憲法と基本的人権
1.基本的人権の尊重
2.国家からの自由
3.国家による自由
4.新しい人権
第5章 現代政治の実態
1.現代の政党政治
2.民主政治と選挙
3.行政機能の拡大
4.さまざまな政治参
第6章 国際政治の基本と展開
1.国際政治の特質
2.戦後国際政治の展開
3.冷戦終結後の世界
第7章 国際法と国際平和
1.国際社会における法
2.国家主権と領土問題
3.国際連合の成立と展開
4.人権の国際的保障
5.平和のための国際的とりくみ
<採用情報>「NGOのメンバーにインタビュー」
II 編 現代の経済
第1章 現代経済のしくみ
1.国民経済における経済主体
2.国民所得と国富
3.市場経済の構造[1]
4.市場経済の構造[2]
5.市場メカニズムの限界[1]
6.市場メカニズムの限界[2]
7.さまざまな企業
8.企業と資本主義
9.政府財政と税の構造
10.財政政策
11.資金の循環と金融市場
12.中央銀行と金融政策
第2章 世界と日本経済の動き
1.市場経済の発展
2.資本主義経済と社会主義経済
3.労働関係の制度と労働組合
4.景気変動と経済成長[1]
5.景気変動と経済成長[2]
6.戦後日本の経済[1]
7.戦後日本の経済[2]
第3章 国際経済のしくみと変化
1.貿易と国際分業
2.国際収支と為替レート
3.戦後の国際金融システムの展開
4.海外投資の拡大
5.グローバル化と地域経済統合
第4章 世界経済の課題と日本
1.南北問題と経済援助
2.世界経済と日本の役割
<採用情報>「なぜ経済学を学ぶのか」
III 編 現代社会の諸課題
第1章 現代日本の政治・経済
1.大きな政府と小さな政府
2.地方自治と地方政治
3.社会保障のあり方
4.高度情報化社会と市民生活
5.産業構造の変化と中小企業
6.労働市場の実態と雇用の流動化
7.消費者問題と消費者保護
8.公害防止と環境保全
9.農業と食料問題
第2章 国際社会の政治・経済
1.地球環境問題
2.核兵器と軍縮
3.人種・民族問題
4.経済格差の是正と国際協力
5.経済摩擦と外交
6.日本の立場と役割
(以上、三省堂「政治・経済」の教科書目次より)



これらの教科書には日本人が日本で暮らすのに必要な知識はほとんど盛り込まれていないのが実情である。 日本の高等教育は日本人が社会で生きていくための最低限の知識を教育していない。これは実は大問題で、サラ金で借金地獄に陥ったり、振り込め詐欺にあった りするのは、無知ゆえに騙されてしまうからである。金利のしくみとか、トラブルで弁護士に相談する方法とか、年金のしくみとか、実生活で必要な社会の知識 をもっと真剣に教えていれば未然に防げるトラブルは多いのだ。国民を無知なままにしておいて隠れたところで狡猾な仕組みをつくるから官僚は油断ならないの である。

日本人が税金オンチである第二の理由に、源泉徴収という制度の存在が大きい。
筆者も会社を作るまでは多くの日本人の例にもれず、税金オンチだったので、源泉徴収を12月になるとお金がもらえる“よい制度”であると勘違いをしていた のである。人間どんな理由にせよ、突然年末の物入りの時期になってお金がもらえるというのはボーナスに準じて単純に嬉しい。その嬉しさにつけ込んだ巧妙な しかけが源泉徴収制度である。
この制度はまず、税徴収の膨大な事務コストを各企業に負担させ、“天引き”という強制徴収を各企業に勝手に実施させて、しかも多く取りすぎた分を年末調整と称して利子も支払わずに返還する、非常に巧みなサラリーマンへの徴税システムなのである。
昔から俗に“くろよん”(9:6:4)と呼ばれ、サラリーマンの9割から確実に所得税を徴収し、しかも事務コストの計算の負担を各企業に押し付けるという誠にけしからん制度なのである。

これが米国などの諸外国になると、税金は国民一人一人が自分で計算して1年に1回申告して直接国に納めるのである。直接国にお金を納めると、当然何百万と現金で振り込むので自分の所得税の重さを肌身で実感するのである。 このことによって、国の無駄使いや税金のしくみに国民の心が向かうことになるのである。

ところが、日本のサラリーマンは知らないところ(会社の経理課)で知らない金額を強制徴収されているものだから、いくら税金を支払っているのか個人的な実感が持てないのである。
これによって日本人の税金オンチは加速されてきたのである。

実は諸外国では、税金の徴収は国会及び国会議員が立法しないとできないことになっているが、日本にはいろいろな抜け穴を用意してある。
1つには政府税調と呼ばれる諮問委員会である。ここで日本の様々な税制度が審議され決定されるが、この会長は現在は一橋大の教授で民間人ある石弘光氏が座 長を務められておられる。彼が日本の税金の仕組みを事実上作っている。が、しかし誰も彼を選挙で選んでいない。国民から託されていない以上、彼に消費税の 税率を決める権限などないはずなのである。これは大大珍事である。権限がどこから来るのか全く不明なのだ。彼は大多数のサラリーマンの怨嗟を買いながら、 官僚が用意する勲一等何とか賞を夢見て今日も国民に頼まれもしない税金を創設しているのである。

もう1つの抜け穴は税務署である。
ストックオプション課税で、全国で裁判が多発したように、明文化されていなければ税務署が勝手に税金を取り立てているのである。その結果、税務会計と管理 会計に矛盾が生じているというのが現在の姿である。 BSとPLは同じではない。徴税官吏が国民から勝手に税を徴収することは昔からどの国でも暴動の原因となってきたが、日本はこれが半ば公然と行われている といえる。 日本は今まで無知が故にこれらのことを知らないで生きてきたのである。これは大蔵省の作戦勝ちというしかあるまい。 ここに大学受験で出題されるものしか学ばないという、偏差値ドーベルマン根性がこの無知に加速をつけてきたのであった(皆さんいい加減、学問を受験の手段 と考えるのをやめましょう)。 因みに、“くろよん”(9:6:4)とは、1960年代から使われた言葉で、税務署による課税所得の捕捉の業務間格差、要するに不公平を現した言葉であ る。

90%課税=サラリーマン
60%課税=自営業者
40%課税=農業、林業、水産業従事者

最近はこの比率はもっと不公平になっていてい、“とーごーさん”(10:5:3)というふうに呼ばれている。
因みに、筆者の学生時代に親が宮崎で農業をしていて、年収が250万であるにもかかわらず、娘を東京の大学に行かせて、仕送りを月に20万していたケースがありました。

これは貯金を崩していたのでしょうか?
いまだに謎であります。