【第6回】アプリケーションの女王

この業界(IT)のコンサルタント諸士、SE の皆様が異口同音に云う言葉がある。
曰く「生産管理システムは難しい」「どうやったら覚えられますか?」「生産管理システムの専門家を育てたいのですがどうしたらいいですか?」

従来の常識では、現場を知らないから(現場を体験していないから)理論や学問だけ学んでも身に付けられないと云われてきた。
もしその仮説が本当だとすると、工場の現場で働いていた人にSEの教育をすれば一流の見識を持った生産管理システムのスペシャリストが育つことになる。
実際、弊社でも同様の試みをしてみたことがあるが、結果は必ずしも期待したとおりにはならなかった。
もちろん、基本的にはシステムは現場の写像なので現場を知らずに情報システムを構築することはできない。だが、現場に精通していれば最善の情報システムを構築できるかというと、そうは問屋が卸さない。何故か?

生産管理システムの難しさはその多様性にある。
例えば、経理システムや給与システムは、法律や会社のルールでレギュレーションが決まっているので最終的な答えはいつも1つに決まる。
これは試験エリートの得意とするところである。学校勉強の秀才は自然界ではめったにない、答えが1つしかありえない希有な問題の答えをドーベルマンのように素早く見つける才能を持つ人々なのである。
それに反して、生産管理システムの世界は最適解が常に複数あって、そのどれを組み合わせるかというところに難しさがある。答えは常に複数あり、またそこに腕の見せ所がある。
これは自然界では常識である。
これを女性を口説くという行為で解説してみよう。 もし、デニーズとディズニーランドに彼女を連れて行ったら必ず好きになってくれるという正解があったら、どんなに世の中の恋愛は楽チンだろうと思う。たぶん筆者などはデニーズのメニューまで丸暗記することだろう。答えが1つしかないということはこんなに楽なことなのだ。
現実には、1. 映画に連れて行く、2. イタリアンに行く、3. ルイヴィトンをプレゼントする、4.ヨン様のサインをプレゼントする、だとかいろんな選択肢があって、それを複数組み合わせてやっと本来の結果が出るか出ないかの問題なのだ。しかも、その選択肢には時間とお金の制約が必ずつきまとう。もしそれがなければ100億円プレゼントしてマンションとハワイの別荘をプレゼントすれば大抵の女性はなびくはずだからである。

生産管理システムのテーマには、在庫を減らすとかリードタイムを短くするとか、いろいろな効果があるが、その方法の最適解は無数にあってそのどれを選択するかというところに知性と技術力が必要となるのである。しかも、予算の制約を加味して実現しなければならない。 ゆえに生産管理システムは単なる学問エリートではクリアできない。これが難しさの本質である。
これは人生の本質でもある。それと同時に、工場の建屋の中にはアプリケーションのすべての要素が精密な時計の歯車のように連動しながら統合化されている。
生産管理システムの中には、原価、物流、工程管理、スケジューリング、在庫管理、受注販売、営業、生産計画、会計、等々アプリケーションの全ての要素が含まれている。ちょうど大学受験で云うと、国立理科系9教科のようなものである(経理システムは私立文系か?)
それゆえ、学ぶのに時間もかかるし奥も深い。生産管理システムは難しいのではない。アプリケーションの女王であるがゆえにこれを得るための努力が並々ならないのである。
そして尚やっかいなことに、刑事の捜査能力と同じで現場を同じくらい歩かないと(即ち経験を重ねないと)、最適解の選択肢の数を増やすことができないという側面がある(経験が選択肢を増やすのです)。
要するに、経験の蓄積が最適で高度な(でもシンプルな)結論(仮説?)を導き出すのだ。これは体で覚えるということである。知識と技術の違いでもある。
生産管理システムは、これゆえに習得に時間がかかる。ところが、皆にそんな経験を積ませていると時間とお金がかかり過ぎて会社が破産してしまうので、そのノウハウを一挙に集めたトラの巻を使って時間とコストを節約するのだ。それがパッケージである。そのためにECObjects のようなパッケージが存在する。

かつて筆者もMRPを学ぶのに米国UNIVACのUNISというパッケージを紐解いて、その考え方、実践法を学んだ。10年くらいは時間の節約になったかもしれない。
これを分析して理解して活用すれば10年分のノウハウが一気に手に入るというわけである。
しかも、現実のシステムとして、お客様にすぐに提供できるのである。
代理店の皆様に我々が提供しているのは単なるプログラムではなく、ECM(エンジニアリング・チェーン・マネジメント)のフィロソフィーを具現化したアプリケーションの女王なのである。時間とコストの削減に大いに活用していただける事を願ってやまない。

合掌。