(図解でわかる生産の実務)生産管理システム

株式会社クラステクノロジー創業者 四倉幹夫の著書『(図解でわかる生産の実務)生産管理システム』を日本能率協会マネジメントセンターから発行いたしました。


内容のご紹介(本文「はじめに」より)


「生産管理」と「生産管理システム」はよく混同されますが、厳密には「生産管理」の管理対象は生産現場であり、「生産管理システム」の管理対象はその現場の写像であるデータ(情報)である、という違いがあります。ただ、どのように生産活動に改革をもたらすか、スループットを向上させるかというゴールはどちらも同じです。


そして一般的に、生産管理と生産管理システムは茫洋としてとっつきにくい分野だと言われています。


  • “生産管理システムは難しい”
  • “どうやったら覚えられますか?”
  • “生産管理システムの専門家を育てたいのですがどうしたらいいですか?”
  • “生産管理の提案を求められているのですが何を書いたらよいかさっぱりわからない”

これらへの答えとして、従来「現場を知らずに(現場を体験せずに)理論や学問だけ学んでも、生産管理システムは身に付けられない」と言われてきました。しかし、もしその仮説が本当だとすると、工場の現場で働いていた人にシステムの教育をすれば、皆が一流の見識を持った生産管理システムのスペシャリストに育ち、素晴らしい生産管理システムが開発できることになります。これは、戦争に行ったらもれなく射撃の名人になれるというようなことを言っているわけですから、必ずしも正論とは言えません。実際に筆者の会社でも「現場を体験させる」という同様の試みをしたことがありますが、結果は必ずしも期待した通りにはなりませんでした(現場のスキルと生産管理システムを設計するスキルが別物だとは言いませんが、同じではないということです)。もちろん、基本的にはシステムは現場の写像ですから、現場を知らずに情報システムを構築することはできません。ですが、現場に精通していれば最善の情報システムを構築できるかというと、そうは問屋が卸さないのです。


それは何故でしょうか?

それは、「生産管理システムの難しさが、その多様性にあるから」です。例えば経理システムや給与システムなら、法律や会社のルールでレギュレーションが決まっていますから、最終的な答えはいつも1つに決まります。これは“試験エリート”の得意とするところです。学校勉強の秀才は、自然界ではめったにない、答えが1つしかありえない希有な問題の答えをドーベルマンのように素早く見つける才能を持つ人々なので、法律や社則でレギュレーションが決まって答えがはっきりしている分野は得意なのです。


それに反して、生産管理システムの世界は、最適解が常に複数あって、そのどれを組み合わせるかというところに難しさがあります。そしてそこに腕の見せ所があります。MRPが絶対的に正しいとか製番システムが正しいとか、そういうことではないのです。問題は最適か最適でないかということになります。


生産管理システムのテーマには、在庫を減らす、リードタイムを短くするなど、様々な効果がありますが、その方法の最適解は無数にあって、そのどれを選択するかというところに知性と技術力が必要となります。しかも予算の制約を加味して実現しなければなりません。

ゆえに、生産管理システムは単なる学問エリートではクリアできないものとなっています。これが、難しさの本質です。システムに関する知識だけでは解決できない問題が、たくさん内在しているということです。生産管理システムは、工場の建屋の中のアプリケーションすべての要素を、精密な時計の歯車のように連動させ、統合化しているのです。


具体的には、生産管理システムの中には原価、物流、工程管理、スケジューリング、在庫管理、受注販売、営業、生産計画、会計など、すべてのアプリケーションの要素が含まれています。ちょうど大学受験で言うと国立理科系9教科のようなものです(となると、経理システムは私立文系でしょうか)。それゆえ、学ぶのに時間もかかるし、奥も深くなります。幅広い分野であると同時に絶対解がなく、常に最適解の組み合わせを求めなければならないところがやっかいです。

そしてさらにやっかいなことに、刑事の捜査能力と同じように、現場を同じくらい歩かないと(経験を重ねないと)、最適解の選択肢の数を増やすことができないという側面があります(経験が選択肢を増やすということです)。経験の蓄積が、最適で高度な(しかしシンプルな)結論(仮説)を導き出します。これは体で覚えるということで、知識と技術の違いでもあります。

ですから、生産管理システムの習得には時間がかかります。ところが皆にそんな経験を積ませていると時間とお金がかかり過ぎて会社が破産してしまうので、そのノウハウを一挙に集めたトラの巻を使うなどして、時間とコストを節約する工夫が必要となってきます。


そして、本書は、その時間と経費の節約ができるよう、一冊の本としてでできる限り、その全体像が理解できるように書いたものです。筆者はかつてMRPを学ぶのに、米国UNIVACのUNISというパッケージを紐解いて、その考え方や実践法を学んだことがあります。このパッケージの習得は全体像を理解するのに理想的で、これだけで10年くらい時間の節約になったと思います。

本書も、よく活用できれば10年分のノウハウを一気に手に入れることも夢ではありません。

 

なお、筆者は「ECObjects」という生産管理パッケージの開発責任者でもあります。ですから現在でもデータベースや画面の設計を行っています。本書はそのECObjectsの中核をなす考え方であるエンジニアリング・チェーン・マネジメントというフィロフィーに基づいて書かれていますから、ところどころに最先端の理論を展開しています。ただ同時に様々な生産管理の成り立ちや歴史も解説していますので、生産管理システムの入門書や教科書として、最大限利用していただけることと思います。

 

本書が皆様の時間とコストの節約に大きく寄与することを、願ってやみません。

 

目 次

 

  • 第1章 生産管理システムの基礎知識
  • 第2章 “在庫を減らす”システム
  • 第3章 “リードタイムを削減する”システム
  • 第4章 “コストダウンする”システム
  • 第5章 “新製品を素早く立ち上げる”システム
  • 第6章 “品質を向上させる”システム
  • 第7章 “市場の需要変動に素早く対応する”システム
  • 第8章 “目標原価に落とし込む”システム
  • 第9章 “計画を変更する”システム
  • 第10章 “原価を知る”システム
  • 第11章 製造業を取り巻くその他のソリューション
  • 第12章 これからの生産管理のデータモデル ―エンジニアリング・チェーン・マネジメント


(図解でわかる生産の実務)生産管理システム

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