【第173回】円安を考える

安倍政権が発足して、アベノミクスという経済(内実は金融緩和だが)政策が発動されて、円が70円台から100円台まで下落した。このまま推移すると、円は120円から150円位まで下落するというエコノミストの予測がある。
金融市場も円の暴落に備えてFXや外貨に資産を分散させないと危ないと叫んでいる。

財テクに全く無頓着で自社株以外は何の取引もしたことのない筆者も、これはまずいかもしれないとふと思った。
円が暴落する前に何がしかのタンス預金を外貨(米ドル?ユーロ?豪ドル?ポンド?)に分散投資しようかと考えたのである。

平成26年10月30日時点での1ドルは108.91円で、1円を米ドルに変換すると0.009175ドルである。仮に現在のレートで100万円をドルに換えると、9,181ドル89セントである。
これがこの後円安が進んで120円になると、9,181ドル89セント×120円=1,101,827円で約10万円儲かることになる。
さらに円安が進んで150円に下がると、9,181ドル89セント×150円=1,377,283円で約40万も儲かることになる。
この予想が確実ならばFXのレバレッジを利かせて5倍のオプションでもつければ、100万円で1,886,415円(約190万)の儲けになるはずである。

この強く、価値の上がったドルを持って何をするのか?
海外に移住するのか?米国に旅行をするのか?
米国で9,181ドルの生活と日本で137万の生活どちらの暮らしがより豊かだろうか?
要はその比較である。

この算数はとても魅力的だが、筆者はすでに“jji”なので(“jji”とは“爺い”の略らしい)いまさら米国で暮らす心算はない。短期の旅行なら行ってもやぶさかではないが、1ヶ月も2ヶ月も滞在するつもりはない。あんなご飯のマズイ国に1週間以上いる自信がないのだ。

今年はランカウイ島に2回目の旅行をした。それはダタイに泊まるためである。ランカウイはマレーシアである。最近、マレーシアには定年を過ぎてから日本から移住する日本人が多い。物価が安く、治安が比較的よく、ゴルフ三昧で、英語も通じるし、気候も温暖だからである。食べ物もそこそこよい。そこでマレーシアは第二の移住先として人気なのである。

人生観は人それぞれなので色々な生き方があってよいと思うが、筆者は日本以外の国に移住する気は全くない。死ぬまで日本がいいと思う。東京でなくともよいが、とにかくもう外国に住むつもりはない。立派な家に住めなくとも、物価が高かろうとも、GOLFが 高かろうとも一向に差し支えない。
だいたい、大きい家は掃除が大変なので老後向きではないのだが、外国に行くと治安のためにある程度の家に住まなければならなくなる。非常に不便である。

第一、荒木町も神楽坂もない町で暮らしても少しも楽しくない(即ち、飲み屋が存在しないということです。ちなみに、マレーシアはイスラム圏なのでいつ禁酒法ができてもおかしくないです。さらに、ハラールのためにスーパーに豚肉は存在しません。それゆえ、豚の角煮は永遠に食卓にのぼりません)。

友人は現地で作ればよいとしても、どうせ現地の日本人会のクラブに入るか、ボランティア仲間を無理やり作って、現地の知り合いを増やすという人間関係だけで、本来の人生の流れの中の人間関係はない。移住のために作ったコミュニケーションである。
ゴルフが安いと言っても日本の1/3位で、“jji”になって引退したら平日いくらでもゴルフに行けるのでそのコストメリットもそんなにないし、毎日ゴルフに行っても筆者はあまり楽しくない(早起きが嫌いなのでむしろ苦痛です)。

いままで大して海外に行ったわけでもないが、東京と諸外国の一番の差はレストランのレベルである。それはミシュランが星の数ですでに証明済である。
東京のように、今日はイタリアン、明日はフレンチ、明後日は日本料理というわけにはいかない。
そんなものを食べたら日本よりお金がかかって仕方がない。マレーシアに行ったら、ハラールの食材で自炊するか、町でラクサやナシゴレンや焼き鳥(これが安くてウマイ)を食べるしかないのである。

仮にFXでドルがたいへん儲かって米国に移住するとしよう。
みなさんはヤフー外為のサイトで、1ドル=108.91円と思っていて、108.91円あれば米国で1ドルの生活ができると自動的に思い込むようにしているようだが、冷静に考えてみると、それがとんでもない間違いであることに気付くであろう。
仮に日本で30,000円、ニューヨークで300ドルのアパートに住んだとしよう。東京都心でで3万円のアパートを借りると、風呂なしのただのボロアパートで済むだけだが、ニューヨークで300ドルのアパートに住むと毎日命が危ない。地下鉄の駅からアパートまで無事に帰れる保障が全くない。そういったスラムにはスーパーマーケットもなければ飲み屋もないし、生活は困窮と不便を極める。また隣人も麻薬密売人とギャングだらけである。衛生面でもかなり問題で快適に入浴するチャンスはまずない。もちろん銭湯などは存在しない。

日本のファミレスで500円もあれば食べられるハンバーグ定食が米国では20ドルのレストランで、4ドルのチップ付きの食事になる。しかもマズイ。
1,000円でお腹がいっぱいになる回転ずしと同じものを食べようと思ったら、100ドルのスシ屋に行って20ドルのチップを用意しなければならない。
これが1ドル=108円なのだろうか?
日本のサービスはタダだが、米国のサービスは20%のチップである。有料なのである。
1ドルが108円なのは石油やiPhone6を輸入する時だけであって、実際の生活レベルはまったく違う。レベルが違いすぎるのである。

日本と同じ生活を送るには、1ドルの価値は10円かもしれないのである。1ドルで108円の生活はできない。
米国ではお金を出してもたいして美味しいものは食べられない。中国では長生きできない。新鮮な空気が吸えない。

そう考えると、“jji”の筆者はいくら円が暴落しても日本に住むしかないのである。1ドル150円になったくらいで移住するほど日本以外の外国は住みやすくはない。
仮に円が暴落したとしても1ドル360円くらいまでは案外平気なのではないか?
電気料は3倍になるかもしれないが、それでも米国や中国の生活よりはましである。
水道の水もあいかわらず飲める。スーパーで刺身が売っている。警備員を雇わなくても暮らせる。自動車がなくても命が危なくない。チップを払わなくとも店員やウエイトレスはありがとうございましたと頭を下げる。

日本はそのような目に見えないコストがかからない社会なのだ。
みなさんはそれでもFXでドルやユーロを買いますか?