【第168回】How to グローバル・サプライチェーン

現在、日本の製造業は中国からアジアにシフトしている。尖閣問題を機会に、チャイナ・リスクの大きさに驚いて、今更ながらのように、タイ、インドネシア、ベトナム等々に生産を移管している。
アジアに製品を分散させると、品番と物の一致(情物一致)、設計変更の共有や、部品の相互融通、製品移管、部品一括調達、生産計画を立てるための実績収集、各国毎の原価管理、サプライチェーンの原価管理、各リージョンの人件費とスキルセットの管理や勤務状況の把握、等々が必要となる。
それらのリソースを管理するためにはどうしたらいいのだろうか?

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そこに「グローバルSCM」という考え方が生まれたのである。
一般的にリソースを管理するためには、リソースの3要素である、“人” “モノ” “金”をマネジメントする必要がある。サプライチェーンにおいて、“人モノ金”を管理するということは、“人の流れ” “モノの流れ” “金の流れ”を管理することである。
グローバル生産の中で、“人の流れ” “モノの流れ” “金の流れ”はどのように管理されるべきなのだろうか?

まず、第一に考えなければならないことは、バラバラのデータベースでバラバラのシステムでデータを運用したのでは拠点間のコミュニケーションは取れないということである。
例えば、自動車の場合、一車種の部品点数が2万~3万あって、100車種くらいをグローバルで生産したとすると、現行で運用している部品表データだけで300万点になるのである。
これを、タイ、インドネシア、中国、ベトナム、日本で別々に管理すると、300万×5=1,500万件のデータを扱うことになる。この膨大なデータを日々のバッチシステムで整合性を取ることは物理的にそもそも不可能である。よしんば高性能のコンピュータで瞬時に統合できたとしても、バッチの運用が一度でも間違ったら(前日の設計変更情報を当日に流してしまったりだとか)、もしくは何らかのトラブルでバッチ連携が失敗したら(この場合は600万(300万+300万)のデータバッチが4回走ることになり、大混乱になることは必定である。誤発注も何十億円になるかもしれない。
そのくらい別々の部品表を各国で分散させる方法では整合性を取ることが困難で、バッチでデータをつなげるのでn泊n日という時間もかかるし、とうていリアルタイムでは設計変更などの情報の共有はできないし、24時間のグローバル運用もできない。
グローバル・サプライチェーンにおいては、部品表は統合化されなければならないのである。
統合化された部品表をそれぞれの国のView(リージョンView)でフィルタリングして、各リージョンがまったく同一の情報を共有するのではなく、それぞれの国の特性(工程設備の違いや、現地調達品等の違い)に合わせて情報をフィルタリングできて、なおかつ内部では完全に統合化されているグローバル統合化部品表が必要となるのである。

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また、現在の日本の製造業は海外の人材をほとんど管理していない。人件費も現地任せ、現地幹部登用も現地任せ、もちろん各人のスキルセットなどはまったく分からない。
製品を中国工場からタイへ移管するにしても、英語を話せたり、溶接の技能を持っている人が何人いるのか、まったく分からない状態なのである。

これを一元化したのが、グローバル人材データベースである。
従来の人事システム、給与システム、勤怠システムは、それぞれデータベースが別であった。それゆえ、例えば、タイの関連会社A社のA氏の一年間の勤怠と給与と人事データ(能力とか)を調べようと思うと、それぞれのシステムを立ち上げて何種類かの画面をたたいてキーを照合して検索しなければならなかった。しかも、インターネットでWeb化されていないので、現地のマネージャーに電話で依頼して、タイで端末を開かなくてはならなかった。しかも一年分の勤怠と給与を過去に遡及して調べるのに小半日はかかってしまうのである。

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下の画面なら、その処理を東京から5秒で行うことができる。
なぜなら、マルチテナント・クラウド(複数会社)だからだ。

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1月から12月までの日付を設定して、会社→組織→給与→勤怠 とクリックしてドリルダウンすれば世界中の子会社の従業員が今朝遅刻したかどうかもリアルタイムで分かるのである。
また、中国からインドネシアに1ラインを移管するときも、その生産を維持できるチームのスキルセットを把握しなければならない。英語ができて、溶接ができて、フォークリフトを使える人とか、ライン設備のメンテの経験が3年以上でなおかつ勤務態度が良い人とか、数学で博士号クラスの学位を持っていて構造解析経験を3年以上つんでいる人とか、様々な人種の様々な人材スキルセットを正確に検索しなければならない。
そのためにも、人事データベースと給与データベースと勤怠データベースは統合化され、かつクラウド化されていなければならないのである。また、マルチ・カレンシー多言語化も必要である。
この統合化部品表と統合化人事データベースによって、世界中の拠点はインターネットによってつながることになる。
これによって、人の流れとモノの流れと金の流れがグローバルに一体となるのである。
その一体化したデータ、統合化されたデータをタイ工場のViewや本社Viewやインドネシア工場のViewという切り口でフィルタリングすることにより、世界の拠点はグローバルにつながるのである。

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真のグローバル・サプライチェーンはそこから始まるのである。