【第153回】日本の教育の欠陥

平均的日本人は大学まで卒業しても社会人になっていない。
なぜならば社会を知らないからである。 社会の仕組みを知らないからである。

確定申告のやりかたや株の買い方や源泉徴収の仕組みや結婚や離婚のやりかたや、相続の仕組みを知っている大学生および新卒がどれだけいるだろうか? 皆無に近いのではないか?社会人になって必ず体験するようなこれら社会の仕組みに彼らが無知であるのはなぜだろうか?

それは教育していないからである。日本の高等教育には税金や相続や株の仕組みを教えるカリキュラムは存在しない。

論語の泰伯第八に
「子日わく、民は之に由らしむべし。之を知らしむべからず」
という言葉がある。

この言葉の本当の解釈は、“人民を政道に従わせることはできるが、一人一人にその内容を理解させることは難しい”であるが、日本の官僚は戦前の内務省の頃からこれを “人民を政治に従わさせればよい。真実を教えてはならない。無知蒙昧なままにしておけ”と解釈して実行してきたのである。
その結果、平均的日本人は大学を出ても社会の仕組みを全く知らないのである。
これは日本の社会の教育の欠陥である。

日本においては、中学を出ても、高校を一番で卒業しても、大学を首席で卒業しても、株の話とか税金の話とか相続の話とか離婚の話とか、人間の人生に関する重要な 知識は全く与えられない。
これらは独学するしかない。これらの知識は学校では教えてくれないのである。
義務教育も高等教育も社会人になるにはとても不十分な内容である。

我々はこのように無知蒙昧に教育されているのである。50代の筆者が言うのだからこれは周知の事実である。
そののち無知な平均的日本人はサラリーマン社会に埋没して、不平不満をもたずに黙々と税金を徴収されるのである。

なぜ筆者がこういうことを書くかというと、ここ数カ月、人事・給与・勤怠のシステムをひたすら作っていたからである。
その過程で税金や社会の仕組みをしこたま勉強することになったのである(そのせいでコラムの更新が遅れてすみません ^^;)。

調べていくうちに、これからの日本社会で従業員を雇用するということがいかに困難になってゆくかがわかってきた。どんどん社会保障費や税金が上がっているのである。それも目に見えないように 徴収されているので、一般の人からはわからない。
これからの10年間の変化をシミュレーションすると恐ろしい予測が成り立つ(普通の労働生産性では雇用が困難になります)。
従業員を極力(日本で)雇用しないビジネスモデルにいろいろな業種が向かっていくのははぼ間違いないのではないだろうか?
円がこれだけ高く、社会保障費が上がり続け、大規模増税が控えて、なおかつデフレでいろいろなものが値崩れを起こしているとあっては、何を原資に会社を支えるのか頭を抱えてしまうであろう。

こういう動乱の時代にあたって、各議員や党全体が勉強不足で、権力闘争に明け暮れる民主党を選んでしまった我々はとんでもない間違った選択をしてしまったようだ。日本がシュリンクしていく過程で官僚は既得権を守るためにありとあらゆる 狡猾な権益保持の手を打っている。それを黙って指をくわえて見ているしかないのはいかにも残念である。忸怩たる思いである。

日本の高校を最優秀で卒業して以下の質問に答えられるであろうか?(要するに常識として教育されてますかということですが)

以下にその例を挙げて質問してみたい。

1. 源泉徴収って何ですか?
2. 年末調整って何ですか?
3. 毎月天引きされる社会保険料はどうやって決まるんですか?

これは基本編、基本問題である。
これが世界的にも非常に巧妙なサラリーマンに対する税金(所得税)の課税システムなのである。
他人の給料を国家が勝手にガメッておいて、それを民間会社の経費で負担させて(要するに会社でありますが) 、しかも取りすぎた税金をそれを利子も付けずに返して“やる!”、ただし申告すればだけどな、“ガハハ”という制度に 日本人はがっちり縛られているのである。 中には年末にお金が貰えるので有難い制度であると思っているバカもいる。
この完ぺきな徴税システムが確立されているので、日本の政府はサラリーマンをクビにすることにおいてとても高いハードルを課している (労働基準法等で解雇のハードルが高いのはこのためでは?と思っています)。
最近の法律ではアルバイトを3年以上やったら自動的正規雇用にするように法改正をして、なんとかサラリーマンの人口を増やすように法改正を進めている。
すべては旧大蔵省の“完璧”徴税システムのためである。 そのくせ宗教法人は無税である。
要するに取れるところから完璧に取るというのが彼らの趣旨である。

ちなみに、応用問題としてあるのが以下である。

4. “クロヨン”とは何か?
5. “トウゴウサン”とは何か?

————–【回答】————–
1. の答え
<模範解答>
源泉徴収(げんせんちょうしゅう)とは給与・報酬などの支払者が、給与・報酬などを支払う際に それから所得税などを差し引いて国などに納付する制度である。主に個人に対しての支払金額が対象となる。
(以上、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)、源泉徴収、2011.11.25付より一部引用)

<筆者の解答>
本来国の経費で徴収すべき個人の所得の税金を会社の事務経費を使って国税庁の代わりに税金を徴収する 仕組み。これによって国には何の徴税作業も発生せずに事前にお金だけが多めに現金で国庫に入ってくる魔法の制度。
ちなみに国はこの制度を流用して、ついでに住民税(特別徴収)、健康保険、厚生年金保険料、 介護保険料、雇用保険料も天引きして徴収している。
この制度は天引きのため、納税者の納税実感が希薄になり、税金をこっそり引き上げるにはうってつけの仕組み といえる。まさに“民は之に由らしむべし。之を知らしむべからず”を地で行く。

2. の答え
<模範解答>
年末調整(ねんまつちょうせい)とは、サラリーマンや公務員などの給与所得者に対して 事業所等が支払った1年間(1月~12月)の給与・賃金及び源泉徴収した所得税について、 原則として12月の最終支払日に再計算し所得税の過不足を調整すること。 所得税法(第190条~193条)に規定されている。
(以上、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)、年末調整、2011.11.25付より一部引用)

<筆者の解答>
サラリーマンから勝手に会社の労力と事務経費を使って“多めに”税金を天引き徴収しておいて、 その多く徴収した個人の所得(財産ですな)を利子もつけずに返してやるという実もフタもない制度である。 この制度に無知な大部分のサラリーマンは自分のお金が返ってくるとは露知らず、年末になるとお金が返ってくる 有難い(うれしい)仕組みであると思っている、クレバーな仕組みである。
確定申告しなくてよいと財務省はメリットを強調するが、要するにサラリーマンの経費をほとんど 認めないということでもある。

3. の答え
<模範解答>
毎月納付する社会保険料は、原則として4~6月に支給された給与をもとにその年の1年間の社会保険料 が決定される。

<筆者の解答>
通常の企業は3月が年度末であることが多く、その年度末の予算達成のため3月の残業代がピーク になることが多い。その3月の残業代は4月に支給されることになるので(36協定に引っかかる場合 は5月6月に繰り越す)、通常は不利な状態で社会保障費が決定される。

4. (クロヨン)の答え
本来課税対象となる所得のうち、税務署が実際に把握できている度合いが、業種により格差があることを指す言葉。
給与所得者に対しては、所得のうち課税対象として9割を把握できているのに対して、個人事業所得者は6割、 農業所得者は4割しか把握できていないと言われていることから生まれた。
(以上、マネー辞典、クロヨン、2011.11.25付より一部引用)

<筆者の補足>
サラリーマン:9、自営業:6、農家:4でクロヨンである。税制の不公平を示す言葉として昔から使われていた。

5. (トーゴーサン)の答え
上記の比率(課税補足率)は現在では、サラリーマン:10 自営業:5 農家:3でトーゴーサンであるといわれている。

最後に、戦後(1962年)に源泉徴収の仕組みが違憲かどうかの裁判がかつてあった。個人の財産を国家が勝手に収奪するのは 財産権の侵害にあたるからである。最高裁はこの時、合憲の判断を下した。
サラリーマンの給与はまず国家のものとなり、その収奪した残りを世のサラリーマンは与えられている。これは立派な奴隷制度である。
サラリーマンになるということは、国家に隷属する奴隷になるということなのである。