【第96回】M&A(後編)

最近、巨額の資金をもとに、経営するリソースも意志もないのにM&Aを仕掛けて、高値で売り抜けるファンドが世界中で活躍?暗躍?しているが、資本の使い 方にルールを設けないと金の暴力によって会社の通常の営業が脅かされたり、雇用が失われたり、不要な再編で競争力を失ったりする事態になることを真剣に心配しているところである。
実は、“会社は株主のものである”という考え方は元々、ウォーレン・バフェットのような、何十年もの長期に株を保有して、その会社の成長を側面から見守っ たり、支援したりする株主に対しての考え方であって、1時間だけリターンキーを押した株主が同じ論理を展開するのはかなりの強弁であると言わざるを得な い。

今度、三角合併が新会社法によって解禁されると高株価をレバレッジとした大型のM&Aが国境を越えて実行されることになる。そうなると、今よりももっと資本による暴力的なM&A戦争が勃発するであろう。
世界的な資金の大流動化が株の世界に為替のような変動をもたらすのではないかと考えている。
なぜかというと通貨価値の異なる国同士の企業が為替価値の異なる株式を担保に、買収が可能になると、株式の付加価値も国境を越えて均一の価値で取引され、 それが広く行われると、株価が国際的な基準で評価され、安い株は高く、高い株は安くなり、国家間や経済圏の差がなくなってくるからである。これはもうひとつのグローバリズムである(新搾取金融になるかもしれません)。

そういう過程で世界の経済は南北差を徐々に縮めて行って均一な社会になるかもしれない。
上海の株価100円と東証の株価100円はまったく同じ価値をもつように評価されるわけである。そうなると豊かな国と貧しい国の国民の生活が、世界絶対値で運営されことになる。
いままでは発展途上国はその中の経済のなかで、富裕と貧富がわかれていたが、それがグローバルに絶対的になるのである。ものの流れもそうなっている。
そうなると貧乏人はその国の中の経済の中の貧乏人ではなく、米国やヨーロッパの金持ちと比較した貧乏であり、バナナは発展途上国で買っても100円で米国で買っても100円で、ドイツで買っても100円の価値になるのである。
すなわち貧富の差が世界基準で絶対化されるのである。
これによって世界絶対基準での貧困層や貧困国が出現することになる。

これは富めるもの(国)と搾取されるもの(国)間の不公平感を生み、来たる世界戦争の原因になるのではないかと思われる。

自由化の光と影があるとすればこれは大きな影なのではないだろうか?
現実、米国は富める者がますます富み、貧しきものがますます貧しくなる社会構造になっている(現在破綻しかけている米国のサブプライムローンなどまさにこの典型ともいえる事件です)。

昔、老子という思想家がいて彼は国の理想を小国寡民であると説いた。
これはグローバル化に対抗したローカリズムといえる思想である。
たとえ隣国の鶏の声が聞こえる距離にあっても独立を保って、交わらないのである(アンチグローバルの最右翼は老子ですな)。
いったい人類の発展とはどういうゴールをもっているのだろうか?

ちなみに老子の小国寡民とは以下のような思想であります。

 


小国寡民、使有什伯之器而不用。
使民重死而不遠徙。
雖有舟興、無所乗之、雖有甲兵、無所陳之。
使人復結縄而用之、甘其食、美其服、安其居、楽其俗、
隣国相望、鶏犬之声相聞、民至老死不相往来。

小さな国で少ない住民、
さまざまな文明の利器が有っても使わないようにさせ、
人民に生命を大切にして、遠くに移住しないようにさせる。
舟や車が有っても、
それに乗ることがなく、
よろいや武器が有っても、
それを並べて使うことがない。
人民に再び太古の[無文字社会の]ように縄を結んでしるしとして用い、
その食事を美味いと思い、
その衣服を美しいと思い、
その住居に落着き、
その習俗を楽しむようにさせる。
[このような理想社会では、]隣国がすぐ向こうに眺められ、
鶏や犬の鳴き声が聞えてきても、
人民は年老いて死ぬまで、
他国に往き来することはない。
(麦谷邦夫訳)



米国はグローバル化と称して、自国のルールを他国に押し付け、そのルールをもとにビジネスを仕掛けて収奪し、富を持ち去ってしまうようなことを繰り返してはいまいか?
敵対的TOBやM&Aを仕掛けるファンドを違法でない(合法かどうかはグレー)強盗と感じるのは筆者だけであろうか?
ちなみに、三角合併とは以下のとおりである(以下引用)。

 


■三角合併[さんかくがっぺい]

三角合併とは、会社を合併する際、消滅会社の株主に対して、対価として、存続会社の株式ではなく親会社の株式を交付して行う合併のこと。平成17年に成立 した新会社法では、消滅会社の株式の対価について、存続会社の株式ではなく、現金その他の財産(例えば親会社株式。外国会社の株式ということもありうる) を用いてもよいことが明確化された。
日本においては、現金や外国会社の株式のみを対価とした合併が可能かどうか疑問とされ、国境を越えたM&Aの障害として指摘されることもあったが、新会社法により、外国会社による日本の会社の子会社化が加速する、という予測もおこなわれている。
なお、新会社法は平成18年5月1日に施行されたが、対価の柔軟化に関する部分については、その1年後の施行となった。これは、対価の柔軟化により、企業 価値を損なうような敵対的買収がおこなわれやすくなるとの懸念に配慮し、それぞれの会社が敵対的買収に対する防衛策を講じる機会を確保するためである。

・三角合併の流れ
親会社(外国会社)が、日本国内に100%出資の子会社B社を設立し、合併対象会社C社を吸収合併する。その際、合併対価としてその親会社の株式を付与する。

【第一ステップ】
 親会社A社が、子会社B社へ、C社株主に対する合併対価として、
 A社株式を付与する。

【第二ステップ】
 合併対象会社C社の株主に対して、存続会社のB社株式ではなく、
 親会社のA社株式を交付する。そしてC社は、吸収合併され、消滅会社となる。

【第三ステップ】
 吸収合併により消滅会社となったC社株主は、新たにA社の株主となる。

(以上、野村證券ホームページ「証券用語解説集」より引用)