【第74回】めざせ中流階級 -年の数ほど万札を(前編)

昨今、フリーターやニートの増加にともなって、下流階級という言葉が流行しているが、 ついほんの20年前までは、日本人の9割が自分達を中流階級(中産階級)だと考えていたのである 。
これは当時のあらゆる意識調査で明らかになっており、その頃は“一億総中流”という言葉が常 識であった。誰もが定職に就き、ある程度出世して、結婚もし、子供も二人生まれ、持ち家も買 って、車も持って、子供は大学をめざし、お父さんはゴルフに精を出すという生活を送っていた のである。
そもそも、歴史的に中流階級(中産階級)とは何かを解説してみよう。


■中産階級
中産階級(ちゅうさんかいきゅう)とは、古典的な労働者階級よりは資産があり、自ら資本家に なるほどの資産はない階層。 通俗的にはサラリーマンやホワイトカラーと呼ばれる。

19世紀の半ば、マルクスは資本主義が発達すればするほど貧富の差が拡大すると予言した。 しか し、19世紀末のドイツ社会民主党の論客ベルンシュタインは、資本主義が発達すればするほど中 産階級が台頭すると予言した。 世界恐慌の後、アメリカの近代経済学者ケインズが中心に財政政 策が立案されるようになり、恐慌出現を防止できるようになって、資本主義の自浄力を発揮した 。収益を独占していては革命を促すと悟った資本も労働組合に譲歩し、資本に協力すれば労働者 の分け前も増えるシステムが成立した。 日本の戦後の保守政権は、経済成長とそれに伴う中産階 級の育成を中心とする政策を取り、70~80年代には一億総中流と言われる状況を作った。 しかし バブルがはじけた今、一億総中流に実体があったのか、厳密な検討が迫られる。 社会学の立場で は中産階級を新中間層と呼称し、マルクス主義の立場では上層労働者階級と呼称する。新中間層 は商店主や自作農など、旧中間層に対応した用語だが、マルクス主義では賃金労働者である点は 工場労働者と変わりがないとの認識で、「遅れた労働者階級」とも呼ぶ。
(以上、Wikipediaより引用)



実は、社会の治安と安定を担う重要なレイヤーがこの中産階級なので、住みよい安全な国を作るためにはこの層がどれだけ多く存在するかというのが重要になってくるのである。
昔、初期のカラーテレビのコマーシャルで、芸人が「ウチのテレビにゃ色がある、隣のテレビに ゃ色がない。あらま、きれいとよく見れば、三洋カラーテレビ」と歌うシーンがあって、他の家 より一歩進んだ贅沢ができることに中流の喜びを感じていたような気がするが、今となっては何をして中流階級なのかが判然としなくなった。国によって中流階級の形が違うとすれば、それは そのまま幸せの価値観が違うということである。ということは人生の目的(ゴール)が違うということになる。

各国の中産階級を調べてみよう。

その1.英国の場合
中流階級発祥の地、英国では、そもそも話す言葉が階級によって異なる。下流はワーカーの英語 、中流はミドルの英語、上流はクイーンズ英語を話す。実は読む新聞や雑誌も異なる。そもそも 言葉遣いが全く違うのである。この辺は伝統でもある。もともと英国では、世襲制の中世時代の 貴族の末裔で(公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の爵位を持つ)上院に議席権を持つ貴族と、これ に郷紳(ジェントリ)という地方の大地主と、産業革命で財をなした資本家階級が加わって上流 階級が構成される。
中流階級は全体の20%くらいの比率で(日本でいえば20%と言うと1000万世帯に相当)肉体労働 をする必要のない中小企業経営者や医者、弁護士などの上層ホワイトカラーがその代表である( 額に汗をかかない職業、即ち、アンチ・ガテン系が特徴です)。政治的に保守党を支持し、その 子弟はイートン校やラグビー等の名門パブリックスクールへ行き、(優秀ならば)オックスフォ ードやケンブリッジに入学できる階級である。

その2.タイにおける中流階級
タイにおける中流階級は、月収3万バーツ以上の世帯で、全体の18.2%を占める(年収に換算す ると、3万×12×1バーツ2.97円=106万9200円で、約年収100万円以上が中流階級である)。
その典型的なライフスタイルを紹介すると、子供は1人ないし2人(高等教育を受けさせるために 少子化が進んでいます)。持ち家を郊外に持って、オートバイ、自動車を所有する。職業は現地 工場のマネージャーなどのホワイトカラーである。

その3.中国における中流階級
中国の国会統計局によると、中国の中流階級の定義は、年収が6万元(6万×1元14.25円=85万5 千円)から50万元(50万×14.25=712万5千円)の範囲内の収入を得ている階級で、都市人口4億 人のおよそ5%、2000万人が中流階級であるという。職業は事業機関の管理職、技術専門家、共産 党や政府機関の公務員、経営者などの、やはりアンチ・ガテン系の職に就いている。もちろん彼等も大学卒以上の学歴を持つ。

その4.インドにおける中流階級
インド政府系シンクタンク、国立応用経済研究所(NCAER)によると、年収3万5千ルピー(3万5千 ×1ルピー2.45円=8万5750円)~14万ルピー(14万×2.45=34万3千円)を中流階級と定義してい る。
ただ最近はカーストの壁をこえて経済力のある勢力が出現してきたので、過渡期にあると考えら れる。
伝統的な上位カーストの人間は現在でも貧乏していても全く労働せず、瞑想や教養に生きるよう なケースもあって、欧米流の中流階級とインド的な中流階級は混在している状態である。
だが、額に汗をしない生活をしているというのは共通しているといえる。

その5.米国における中流階級
皆さんはニコール・キッドマンの「ステップフォード・ワイフ」をご覧になっただろうか?あの 映画の舞台となった、ステップフォードのような要塞住宅が米国の典型的な中流階級の居住地で ある。高い壁に囲まれて、セキュリティのしっかりしたFort(砦)の中に、似たような造りの建売住宅が同じような町並みで集まっている。そこに住んでいる住人は誰もが自分の隣人 (neighborhoodですな)がエリートでリッチで、そしてよき家庭であるかを自慢するのである。家 の値段は50万ドル~100万ドル内外。ポストが壊れたり、ペンキがはげたりした状態を放置してお くと、周囲の環境を劣化させたというペナルティの代わりに100ドルの罰金が課せられる、そういった超高級住宅地が全米に存在する。
米国の新興中産階級は、こうした住宅に住むことによって、家族の安全と健全な養育環境をお金で買うのである。隣人の品質もお金が保障してくれるというわけである(孟母三遷ですな)。
そのために米国のホワイトカラーは死ぬほど働かなくてはならない。こうした米国の中流階級の 生活年収は最低10万ドル以上ないと維持するのは難しい。
実は米国では1967年に17.5%いた中流階級が2004年には14.8%まで減少している。これはGMな どに代表されるホワイトカラーのリストラの結果である。富の偏在が深く進行していることを示 している。

ここまでざっと世界の中流階級の生活レベルを振り返ってきたが、共通点が3つある。
1つめは、額に汗しない職業に就いていること(アンチ・ガテン系職業)
2つめは、大卒以上の高学歴であること(または子弟のマイルストーンに大学進学が必須であるこ と)
3つめは、人口の中の5~20%の領域の高収入であることである。

次回へ続く