【第73回】国家の罠

2006年6月22日付けの朝刊で、三井住友海上が保険金不払いで金融庁から告発され、医療保険の販売を無期限に停止するという処分に追い込まれた。新聞によれば、4万5千件の保険金不払いが発覚したと報道されている。2005年2月の明治安田生命、先日の損保ジャパンに続く3件目の摘発である。
そもそも、今調べて4万5千件も不払いがあったということは、大なり小なり解釈の違いや規程の厳密運用等で昔からあったことかもしれないと考えるのは筆者だけであろうか?それをなぜ今、金融庁が総力をあげてこれだけ大規模な保険金の不払いを摘発しているのか皆さんは不思議に思わないのだろうか?
この2,3年間で政府(本当は官僚)は、保険金の不払いを一掃して、一人暮らしの身寄りのない老人の死亡保険金も含めて国民がかけた保険料を全国民にきちんと支払わせるように監視を強化していると思われる。
その理由を邪推してみよう。

これから20年の間に国民の個人金融資産の54%に相当する額が国の相続税の対象となる予定である。
1400兆円の54%であるから、ざっと756兆円がその対象である。そして1400兆円の中で390兆円を占めるのが保険金・年金である。
保険金はいくら個人金融資産として加入していても、保険会社がクレームをつけて保険金を支払わなければ相続税の対象とはならない。即ち、国は税金を取りっぱぐれてしまうわけである。それを阻止するために保険会社が自由裁量で保険金支払いをごまかさないように今回のような営業停止を含む当局の厳しい対応が背景にあると筆者は考える。

当局はこれまでも保険会社の不払いを黙認してきたのではないかという疑いがある。そうでなければ1社で4万5千件もの不払いが過去100年にわたる保険会社の運営の中で昨年だけ突然出現した現象であるとは考えにくいからである。
100年間(正確には1918年の創業なので88年間ですが)、ずっと真面目に保険金を正しく支払ってきて、この1年で突然4万5千件の不払いが起きたと 本当に考えるならば、この数年で会社の舵取りを担った経営陣が突然ルールを変更して不正をやり始めたとしか思えない。もしそうであれば、営業停止ではなく逮捕されるべき問題だからである。
これは当局の方針が突然変わったと見るべきであると筆者は思うのだ。
なぜ当局の方針が突然変わったかといえば、来るべき団塊の世代のご臨終に向けて、相続税をもれなく徴収するための布石だからである。
ひねくれ者の筆者はそういう風に邪推するわけである。

国はペイオフ制度を実施し、銀行預金は1000万円までしか保障されないと脅かして国民の銀行口座をうまく名寄せした(老人の資産を正確に把握するためです)。今回は保険会社に圧力をかけて保険金を不払いにさせないように準備した。生前贈与の仕組みを巧妙に作って不動産の劣化を納税者に転嫁し、できるだけ多くの相続税を徴収するというインフラ作りに成功した。そして相続税の仕組みを何度も変えて広く網掛けするシナリオを完成させたのである。
日本の個人資産にもれなく相続税を課税するという、網掛けするインフラは完成しつつある。

ここで問題となるのが、“で、そのお金どういう風に使うの?”なのである。国もマスコミも莫大な相続税が国庫に入ることをまったく宣伝していない。まるで日光の猿の彫刻のように、見ざる言わざる聞かざるなのだ。じっと黙っているのが今の姿なのである。

先頃、高額所得者の長者番付というのが廃止された。その理由は個人情報の保護を目的としたものらしい。長者番付は「たくさん税金を払ってくれてありがとう」という名誉表彰的な意味と、「社会は君たち金持ちをWatchしているよ」の注意喚起的な意味合いがあったと思う。

そこで筆者の提案だが、今回長者番付が廃止された代わりに遺産長者番付というものをつくり、最も多くの遺産を残した人々を発表して顕栄すればよいのではないだろうか。
遺産長者ならばもう既に鬼籍に入っているので個人情報保護法の対象外であるし、遺産長者番付を国民がWatchすれば、官僚が特別会計の仕組みを悪用して、何百兆もの相続税を国民の目に見えないところに流用することを少しは監視できるというものである。
それと平行して遺産売上高速報のような統計情報を毎月公表して、遺産による国庫収入の推移を速報ベースで国会で発表したらどうであろうか?そうすることに よって国民やマスコミの関心を常に引き止める必要もある。情報開示は役人の不正を未然に防ぐ防衛手段になるのである。日経遺産ニュースを発行するのもいい だろう。

これだけ巧妙な仕掛けを我々の目の見えないところで仕掛けた悪賢い官僚ならば、もれなく徴収した相続税をどう使うかは既に設計されていると見るべきである。
我々の貴重な相続税が国の借金の穴埋めをしたり、年金の補充に使われるならよいが、不要なダムや道路や大国中国へのODAなんかに使われたら大損害である。
日本の国民は無知ゆえ狡猾な官僚の仕掛けた罠にはまりっ放しであった。棺桶に入ってからも官僚の罠にはまるのはあまり気持ちのいいことではない。

もう騙されたくないと思うのは筆者だけであろうか?