【第66回】民主主義の行方(後編)

ケース3 日本の場合
日本が普通選挙を始めたのは、1925年(大正14年)加藤高明によってである。それまでは納税額によって選挙権が与えられる制限選挙制であった。
これは藤原教授が「国家の品格」で書いているとおり、アジアでは最初で、イギリスより7年遅れただけである。日本が民主主義国家になったのは意外に早かったのである。
ところが、その民主国家、主権在民の日本がなぜ満州事変を起こし、太平洋戦争を始めるような軍国主義に走ったのだろうか?
その答えは歴代の政治家の質の変化と深く関係がある。普通選挙の以前と以降で政治家の質が激変したのである。普通選挙時代と制限選挙時代の総理大臣がどういう風に変遷したか列記してみよう。


初代  伊藤博文    第31代 岡田啓介
第2代  黒田清隆    第32代 広田弘毅 
第3代  山県有朋    第33代 林銑十郎
第4代  松方正義    第34代 近衞文麿 
第5代  伊藤博文    第35代 平沼騏一郎 
第6代  松方正義    第36代 阿部信行
第7代  伊藤博文    第37代 米内光政
第8代  大隈重信    第38代 近衞文麿
第9代  山県有朋    第39代 近衞文麿
第10代 伊藤博文    第40代 東條英機
第11代 桂太郎     第41代 小磯国昭
第12代 西園寺公望   第42代 鈴木貫太郎
第13代 桂太郎     第43代 東久邇宮稔彦王
第14代 西園寺公望   第44代 幣原喜重郎
第15代 桂太郎     第45代 吉田茂
第16代 山本権兵衛   第46代 片山哲
第17代 大隈重信    第47代 芦田均
第18代 寺内正毅    第48代 吉田茂
第19代 原敬      第49代 吉田茂
第20代 高橋是清    第50代 吉田茂
第21代 加藤友三郎   第51代 吉田茂
第22代 山本権兵衛   第52代 鳩山一郎
第23代 清浦奎吾    第53代 鳩山一郎
第24代 加藤高明    第54代 鳩山一郎
第25代 若槻礼次郎   第55代 石橋湛山
第26代 田中義一     第56代 岸信介
第27代 浜口雄幸    第57代 岸信介
第28代 若槻礼次郎    第58代 池田勇人
第29代 犬養毅     第59代 池田勇人
第30代 斉藤実     第60代 池田勇人
             (以降省略)

第30代辺りから政治家の質が変化していることにお気づきだろうか?
二二六事件で暗殺される斉藤実は海軍の軍人である。第31代の岡田啓介も海軍軍人である。
これを見る限り、日本の国民による普通選挙が日本の政治家の質を変化させたことは明らかであろう。

これらのケースによって民主主義は永遠に成熟しない国民によって衰退、または劣化するということが判る。
藤原教授はそれを打開するために、スーパーエリートが出現しなくてはならないと論陣を張っているが、筆者は問題の根源が悪平等な選挙にあると思うので、現 在のような普通選挙制をやめて、もう一度明治時代のような制限選挙に戻して、選挙に参加する国民のレベルを上方修正すればよいと考える。
その設計思想は、以下の条件をクリアして成立する。

税金を支払わない者には選挙権を与えない。選挙権は16歳以上。
ただし病気とか障害とか老齢で働けない人は別とする。

18歳以上の子供を持つ専業主婦の参政権をはく奪する。
ただしNPO活動や親族の扶養義務をはたしていればこのかぎりではない。
(子供が18才すぎて社会に参加しないのは子育てのためでなく当人の自発的希望と解釈されるからです。アルバイトでもパートでもいいから社会に参加すべきです。ちなみにこの意見は専業主婦がきらいな筆者の独断と偏見が含まれています)

3回以上、国政選挙に参加しない人は選挙権を失う。もう一度選挙権が欲しい人は役所に資格の申請を行う。
(興味のない人には参加してもらわなくともよいということです)

納税額によって票の大きさをポイント制にする。
(例:納税額1,000万単位に1票分ポイントが加算される。2,3人分働いている人には選挙権の票も増えるのです。)
上記の制度を実行すると、外国人にも参政権が存在し、アルバイトして税金を払っていれば高校生でも選挙権を持つことになる。要するに社会への義務を果たした人々だけが選挙に参加すれば民主主義は腐敗せずに持ちこたえることができるのではないかという提言である。

もし、ライブドアの前社長、堀江被告が前回の衆院選で国会議員に当選していたら、彼は国会議員の不逮捕特権で逮捕されることはなかったのである。そうなる とライブドア事件も闇に葬られて事件にはならなかっただろうし、いまでもライブドアはマザーズで1兆円近くの時価総額になっていたかもしれない。
彼が当選した可能性は大いにあったのだ。衆愚による選挙結果は恐ろしい社会の歪を生む可能性があるのである(イタリアでもかつてはポルノ女優が当選して大人気でした)。

我々が財産や命を託している日本という国の基盤は決して磐石ではない。
たった一回の選挙で米国と再び開戦する可能性もある。

やはりスーパーエリートを輩出する仕組みが必要になっているのかもしれない。