【第25回】新デフレ論 -日本及び日本人よ、どこへ行く

たまには経済の小話しを1つ。
竹中経済相をはじめとする政府首脳は「デフレを克服する」と称してインフレ待望論のような政策を打とうとしているが、今がデフレかインフレか、皆さんは真剣に考えたことがあるだろうか? そもそもデフレとは何ぞやかを下記に引用してみよう。


・デフレ
デフレーションの略。インフレが広範な超過需要の存在する状態であるのに対して、デフレは広範な超過供給の存在する状態である。インフレは物価騰貴をもたらすが、デフレは継続的な物価下落をもたらす。たとえば生産過剰から供給過剰になっている状態はデフレである。
一般に供給が需要より多ければ物価は下がり、企業の収益は減るか欠損を出すために不況となる。もし価格協定などによって物価の下落が食い止められることは あっても、失業の増大という形で不況に陥る。以上はモノの面から見た場合であるが、お金とモノとの関係から見ると通貨量が物資の流通量より少ない状態とさ れている。デフレには好景気、不景気の交代とともに起こる循環デフレとインフレ抑制のための政策的デフレがある。政策的デフレは金融引締めや財政緊縮など によって起こる。 -日経経済用語辞典より


人類がデフレを経験したのは、産業革命の頃の英国で、1870~90年代まで約30年間続いた。
その頃の英国では伝統的にストック(土地、建物、等々)の上に立脚して富んでいたジェントリ(郷紳:地主階級)という貴族階級がいたが、その人々が産業革命の進展によるデフレによって没落し、代わりに商工業で成功を収め、フロー(現金及び換金性の高い資産)を稼いでいた、Captain of Industry(実業の将師)と呼ばれる中産階級が台頭したのである。
とりも直さずデフレというのは物価が下がる現象で、ストックの形をしている資産はデフレ下では劣化する。
その代わりフローを得ている給与所得者の可処分所得は相対的に価値を増すのである。
平たく言うと、換金性の低い資産(ストック)の価値がどんどん下がり、換金性の高い資産(フロー)の価値が上がる(下がらない)状態のことを指す。

皆さんはここ数年100円ショップでワンコイン(100円玉)で買える品目が多様化していることをご存知であろうか?最近ではワイングラスや折りたたみ傘 まで買えるようになっている。100円の価値は目に見えて上昇しているのである。例え銀行に預金して、殆ど利子がつかない状態でも100円の価値は上がり続けているのである。ということは、物価は持続的に下がっているのである。
物価が上がることをインフレ、物価が下がることをデフレとすれば、間違いなく現在の日本の状態(本当は日本だけではないのですが、先日訪問したドイツも驚くくらい物価が下落していました)はデフレであると思う。
財務省が何と言おうと竹中さんが何と言おうと、一生活者の実感としてそう思う。

どうしてこういう現象が起きるのか?

それは産業革命の時代と同じで、モノが過剰に生産されて消費を大きく上回っているからである。
現在は発展途上国(第三世界)第二次産業革命が起きていると筆者は考えている。
中国、韓国、ベトナム、東欧における第二次産業革命が起きて、世界中で過剰な生産が続いているのである。
筆者の独断と偏見であるが、20世紀はインフレの時代であった。なぜそうなったかと言えば、前半の50年間戦争をしまくりで資源を浪費し続けたため、生産財が消費者に行き渡らなくなってしまって産業革命による生産性の向上は相殺されてしまったのである。

それによって後半の50年間(正確に言うと、1945年~1990年までですが)は、作れば作っただけ売れる、大量生産大量消費のインフレの時代となった のである。要するに、戦争をやりすぎて物資が不足していたのである。その結果、20世紀の経済はインフレの経済となったのである。

竹中さんあたりが米国に留学した頃はちょうどそんな時代(パックスアメリカーナでもあったが)であったので、インフレ=ノーマル、デフレ=アブノーマルという固定観念が頭の中にこびりついてしまったのである。
米国を規範とする政策(例えば日本の銀行は多すぎるから米国のようにビッグ3くらいまで減らすべきだ、等のグローバルスタンダード論)が正しいとDNAに転写されているのである。
筆者が考えるに、20世紀はインフレの時代だったかもしれないが、21世紀から向こうはずーっとデフレが続く。とてつもなく大きい戦争でも起きない限り生産性は向上し続けるからである。
しかも絶え間のない技術革新によって同じ値段で購入できる工業製品の価値性能はどんどん向上しつづけるだろう。(ex. 携帯、PC、デジカメ)

こういう時代に絶対買ってはいけないものがある。換金性の低い商品である。
その筆頭がブランド品である。ブランド品は典型的なストックである。モノの価値が下がり続ける時代にブランド品を買ってはいけない。またデフレ時代のもっとも非効率的な投資である。
次が不動産である。デフレの時代はストックの価値が長期的に下落することになる。
従って、今日5,000万で買ったマンションは必ず値下がりし、10年後には半額以下に価値が下がる。加えて、相続によって物納されたデフレ不動産が国に大量に納入されるので、日本の国家は日本最大の不動産屋となり、その競売物件がますます資産デフレを加速させるであろう。

今から50年後の2050年の実行予測では、人口の2/3が60歳以上となって引退し、ストックによる利回りで生計を立てるようになる。そうなると家賃やマンションはどんどん値下がりし、デフレはますます進行する。

そうなった時、富める日本人のモデルとは何か?

死ぬまで現役の仕事をしていてフローを得ることが出来るような人生を歩んだ人々である。
引退しなくても、技能なりビジネスを持っていて現役を続けられる人々である。
サラリーマンや管理職は社会人材のストックで、技術者や自営業は社会人材のフローと言うことができる。

60を過ぎても現役で働ける能力が皆さんにはありますか?
デフレに立ち向かえる日本人は、社会から死ぬまで必要とされる人々です。

皆さん、隠居なんか考えずに頑張りましょう。定年も65まで延長されますから加齢して経験を積めば積むほどバリューが上がる人材を目指しましょう。