【第31回】出る杭を打つな! -人望はマネジメントの成績表である

今から20年前、ビジネス現場の中堅層を団塊の世代が担っていた頃、日本中どこの職場でも言われ続けた言葉があった。「あいつは生意気だ!」

この言葉は最近はあまり聞かれなくなった。生意気な若者が減ったわけではない。むしろ、昔より「生意気」な若者は増えたと思う。また、「出る杭を打つ」とか「能あるタカは爪を隠す」というのも言われなくなった。

「生意気だ」という科白は通常、年長者が年下を諌める時に使用される。年下が年配者を非難す る時に使われる言葉ではない。
この言葉の裏には実に深い意味が隠されており、一部の団塊の世代の人々がリストラされた理由もこの中に含まれているのである。

そのメカニズムを解説してみよう。

皆さんは年長者が年少者よりも絶対的に有利であるポイントは何かと問われたらどう答えるであ ろうか?
社内で聞いてみたところ、「経験ですか?」という答えが多かった。
否!
例えば、10年間刑務所に入っていた人は、10年企業の中で出世していった人より社会経験、人生 経験が豊富であると言えないからだ(社会に出ていないので当たり前の話しだが)。
それでは、年上の方が年下より絶対的に有利(アドバンテージ)な点とは何か?

それは「歳をとっている」ということである。

そんなの当たり前じゃないか、と皆さんは憤慨するに違いない。
例えば、ここにAさんという45歳のおじさんと、Bさんという25歳の若者がいたとする。
AさんはBさんより20歳アドバンテージを持っているのである。なぜならば、Bさんは31歳も32歳も 33歳も34歳も45歳も体験したことがないからである。
ところがAさんは31歳~45歳までもれなく体験済みである。このことによって、AさんはBさんをガ ウス記号で判定できるのである。

Aさんは25歳の頃の自分と、今のBさんを絶対値で比較できるのである。

従って、年上のAさんから見れば25歳の時点でBさんがAさんより優秀か優秀でないかは完全に判定できるわけである。
逆にBさんは45歳になったことがないのでAさんよりも優秀であるかどうかは予測はつくが判定はできない。

年長者が年少者に対して「出る杭を打つ」という行為に出るのは、明らかに年少者のポテンシャルが自分より素晴らしいとわかっていてその才能を握りつぶす行為なのである。
逆に人徳のあるマネジメントは、部下が自分よりも才能溢れる人間と判ったならば、評価、育成して(そうしなくとも自分より偉くなることは必定なのだが)、後で育ててもらったと感謝されて、大成した後に自分より高い才能を提供してもらうことになるのである。
このことを「カムバック・サーモン作戦」と言う。

ここまで書くともうおわかりだと思うが、なぜ経験を積んだサラリーマン(特に団塊の世代に多い が)が、50代になって会社からリストラされたかということの1つの背景がここにあると筆者は考えている。
「歳が上である」というアドバンテージを悪い方向に使ったがために、復讐されたのではないかと。
すなわち理不尽な理由で出る杭を打ったのである。
その人には、自分のことより先に、部下のことを考える思いやるという行為が指導の中に欠落していたのである。
だから年を取ってついて来る部下がいないのである。
(実はそうやって人望が全くなくなって、会社を去っていった先輩を数多く見ています。他人事ではないのです)。

ひどい人になると、ハンディ0で45歳の実力と25歳の実力を比較する人もいる。
そういう人は、「まだまだあいつには負けない」と訳のわからないことを自慢するのである。
20年も経験が違うのだから、同じ筈はないし、また、同じだったら相当問題と言わざるを得ない 。
あくまでも自分の25歳と相手の25歳を比較しなければジェントルマンではないしフェアではない 。

そこであんたのところはどうかというと、そういう意味で、弊社の技術者は、筆者の若い頃より も優秀であると(現時点では)言える(但し、そのまま転職とか、サボったりしなければの話であるが)。
ちなみに筆者は二日酔いと遅刻の常習犯でした。

そう考えると、未来はそんなに悲観的ではない。
若いというポテンシャルは、無限の未来を約束していると言えるのである。

皆さん、サボらずに精進しましょう!


PS.因みに昔職場ではこんなことわざが流行っていました。これも日本サラリーマン社会の縮図でした。

出る杭は打たれる
能ある鷹は爪を隠す
雉も鳴かずば打たれまい
寄らば大樹の陰
長いものには巻かれろ
赤信号皆で渡れば怖くない