【第10回】人工知能の未来 -映画「アイロボット」に捧げる

人工知能の未来-I, Robotは可能か
アイザックアシモフの名作がついに映画化された。
1950年に出版された「わたしはロボット」である。現在、ウィルスミスが出演して、「I, Robot」の名前で公開されている。
この小説はロボットの憲法とも呼ばれる。ロボット三原則を定義して、その後のSF に大きな足跡を残した。


<ロボット三原則>
1. ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない(A robot may not harm a human being, or, through inaction, allow a human being to come to harm.)

2.ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない (A robot must obey the orders given to it by the human beings, except where such orders would conflict with the First Law.)

3.ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない(A robot must protect its own existence, as long as such protection does not conflict the First or Second Law.)


この映画に登場するSunnyというロボットは、恐れや希望や悲しみの感情を持つに至ったロボットである。現在の技術でこういう人間に近い人工知能が設計出来るかというと、筆者は可能であろうと思う。
人間の脳、神経系は多数のニューロンと呼ばれる神経細胞で構成されたネットワークである。このネットワークのことをニューラルネットワークと呼ぶ。
このニューロンをネットワーク化するしくみが、シナプスという部位を伝わってアセチルコリンやドーパミンのような化学物質を(神経伝達物質)放出させて、記憶したり、追い出したり、考察したりするしくみである。
これが人間の脳のモデルである。
このモデルをコンピュータに移植すると、ニューロンはネットワーク内の超並列オブジェクトである。そのオブジェクト同士を結びつけるタスクがネットワークエージェントプログラムである。それぞれのオブジェクトは演算や推論や知識ベースを備えて一定の情報を供給する。
このモデルをORB(オブジェクト・リクエスト・ブローカー)と呼ぶ。

実は、最近Javaの世界で流行しているEJBというアーキテクチャは、ORBの一実装形なのである。このオブジェクトを自由自在に渡り歩いて情報を伝達したり、演算をしたりするプログラムがエージェントプログラムである。現在はウィルスとして実用化されている。
そう考えていくと、人工知能の技術は、現在のオブジェクト指向、知識ベース、データベース、ネットワーク、ORBの技術を統合化した総合技術なのである。
この統合化はインターネットが普及した現在、完全に実用の領域に入っているといえよう。この時に重要になってくるのが知識ベースである。
AIシステムの世界では、推論(前向き、後向き)をするために知識ベースのモデルはリスト構造であった。リスト構造とは、データを次々に連結していって、 ひとまとまりにしたデータ構造で、リストの各要素はデータ本体を格納するデータ部と、前後のアドレスを格納するポインタ部をもつ構造体(セル)によって表現される。弊社では、統合化部品表にもこのデータ構造を採用して、通常のツリー構造では表現不可能な工程手順や需給ルートや物流ルートなどのルーティングを表現できるようになっている。
かつて、AIシステムやエキスパートシステムを作るときに一番問題になったのが、この知識ベースをどうやって作り、どうやってメンテナンスするかという問題であった。いろいろなルールをデータやフラグの形にして設定するのはいいが、そのルールが時代やビジネスの変化によっていろいろ変化するために知識ベースをどう設計するかがAIシステムの最大の課題であった。

もし、人間の常識に相当する知識ベースが作れたとしたら、コンピュータやロボットは半製品ではなく、何もロードすることなく、セットアップすることもなく使える1つの知識ツールになるのである。このSunnyのようなロボットを作るためには、この知識ベースをどういうふうに作るかというのが大きなポイントになる。常識をもったコンピュータを工場から出荷するのである。この知識ベースは、イメージやデータやアルゴリズムをフリーフォーマットで蓄積し、自由にアクセスでき、超高速に演算できなければならない。しかも、あらゆる角度からのアクセス・エントリポイントをもっていなければならない究極のデータベースである。I/O から取得した情報を自動的に貯蔵(学習するということだが)するしくみもなくてはならない。
我々はオブジェクト指向のモジュールの中にあらゆるパターンの生産管理のノウハウを現在蓄積しているが、いつかAI 知識ベースの時代になった時にそれらの膨大なノウハウがコンテンツとして活用されるのではないかと考えるのである。
そのときクラステクノロジーは、製造業の全般の知識ベースを発売するコンテンツプロバイダか、データベースベンダーになっているかもしれない。

筆者がとうに死んでしまった未来の話であるが、I,Robotの時代の2035年にはそのビジネスを展開しているかもしれない。
これは壮大な予言である。